▪️本企画ラボ・プログラムについて

アジア太平洋地域のアーティスト、研究者、文化関係者からなる「アート&サイエンス」の領域横断型・学際的なラボを立ち上げます。

オーストラリアを代表するパフォーマンスアーティストであり、また、1970年代より日本に19年間居住し、日本のロボット工学者と協働して科学と芸術が融合した先駆的作品を創作してきたステラーク。日本を含めた各国のアーティストや研究者に多大な影響を与え続けているアーティストの芸術的実践を通して、多国籍かつ領域横断的なアイデア共有、ディスカッション、トークセッションをオンラインとオンサイト(物理)で行い、今後の「アート&サイエンス」の学際的な研究プロジェクト、展覧会、パフォーマンス、ワークショップ、その他同テーマに関連するプロジェクトの礎を築きます。

本リサーチ・ラボ・プログラムは、参加者がステラーク作品と創作活動を題材に、日々の実践や研究のためのインスピレーションを得て、アジア太平洋諸国を横断して新たな文化的・科学的ナラティブ(言説)を協働的に創造する場となります。ラボ・プログラムは物理かつヴァーチャルな実験室として稼働し、今後の「アート&サイエンス」分野における中長期的視野をもったネットワーキング・プラットフォームとなります。

ラボ参加者(下記)は、ステラークの作品に高い関心を持ち、直接的・間接的影響を受けた候補者を主なゲストとして招き、またラボ運営の過程で参加者からの推薦も受けて決定します。公開ミーティングやトークセッションでは幅広いオーディエンスの参加を歓迎します。

 

本ラボの大きな目的は、ステラークという「アート&サイエンス」領域のパイオニアを基軸にし、未だ確立されていない同領域のターミノロジーや言説を押し広げ、各専門家の意見を交えて炙り出し、また多言語で明文化し展開することです。

同時に、分野横断的な芸術・研究活動全盛の現代において、芸術家、研究者、キュレーター、科学・文化関係者が中長期的に交流し、次世代の活動領域と創作・開発機会を増やすためのプラットフォームとなることです。

そして、アジア太平洋地域の参加者を中心に活動の機運を生み出し、後々には世界各国からの参加を促進します。

このラボ・プログラムの成果として、各参加者が寄稿するブックレット(デジタル及びフィジカル)を作成します。

 

▪️ラボ立ち上げの趣旨と背景

本ラボはLiving Together Co.のイニシアティブとして始まり、各国参加者とアイデア交換の過程で協働しながら共にかたち創るプログラムです。Living Together Co.ではステラークというアーティストに着目し、これまでも創作支援、また協働してきました。その過程で芸術領域のみならず科学領域の多くの研究者が日本を含めた各国で彼の影響を受けている事実を確認してきました。

分野横断的なプロセスを経て約50年前に創作されたアート作品が、その後科学領域の研究開発に影響を与え、近い将来的に一部はマーケットに出ていくと想定される稀有な事実、「科学」と「芸術」のフィードバックループによる社会的インパクトを物語る題材がステラーク作品と創作実践にはあります。芸術(家)の社会的価値を改めて考え直す事例として、ステラークという個人アーティストを超えて、アート&サイエンス、また多分野の領域横断的交流とネットワーキングを促します。また作家の活動をアーカイブし、将来的なプロジェクトの種を育み次世代に繋げていければと考え、ラボを立ち上げます。

 

▪️SPLIT BODY「スプリット・ボディ」

本ラボのタイトルに含まれる「スプリット・ボディ」はステラークがこれまでのパフォーマンス作品の中でも度々提示してきた概念であり、「分裂した身体」かつ、「Phantom Body ファントム・ボディ」、「Fractal Flesh フラクタル・フレッシュ」等とともにパフォーマンスする身体を体験的にあらわす概念として語られてきました。

自己の主体性、身体の主体性が不随意の身体運動や他者的な存在や媒介、機械やヴァーチャル空間等の介入により常に変容と変身を促されている状態を意味しています。近代的な「自己」「個人」というフレームからの脱却を繰り返す身体とも解釈し得るでしょう。そして、「現代的キメラ」として存在する身体です。

一方、日本語の「分身」という概念は、もう一人の自分、二重の自己、身分けされた自己/身体、という様々な社会的・文化的解釈が可能です。ロボティクスやサイボーグ、アンドロイド、ヴァーチャル・セルフ、オルタナティブ・セルフ等、科学分野でもこれらの概念と社会実装が進んできた現在において、ステラークの身体観とパフォーマンス作品がアート&サイエンスの交差点として、新たな「分身」の意味を私たちに再想像させてくれるはずです。

(参照:ステラークによるスプリットボディ概念  As to the concept of “Split Body”- )

(2026年3月以降発行予定、一定期間無料ダウンロード)

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